酸化ストレスとは?

「酸化ストレス」と、健康を保つために欠かせない「抗酸化」について説明します。

酸化とは

そもそも、「酸化」とは何でしょうか。

私たちの体の中では、常に細胞内で無数の化学反応が起き、代謝を行うことで生命活動を維持しています。化学反応において、一つの分子が電子を失うことを「酸化」と呼びます。すると、もう一方の分子では電子を得ることになります。これは「還元」と呼ばれます。これが「酸化/還元反応」ですね。酸化/還元反応は、細胞の生存と、体内の恒常性(ホメオスタシス)の維持のために不可欠な生理機構です。

細胞膜の構造

ところで、細胞の一番外側の膜の部分=細胞膜は、体内全ての細胞間のコミュニケーションを行い、細胞機能を正常に保つために非常に重要な働きをしています。細胞膜を形成するリン脂質は、疎水性の脂肪酸尾部が向かい合っていて、親水性のグリセロール頭部はそれぞれ反対側に並ぶというつくりになっています。つまり、細胞膜の内部には疎水性の脂肪酸が充満し、膜の外側(つまり細胞の内側と外側と接する部分)は親水性になっている、という構造。このような構造は「細胞膜の脂質二重層」と呼ばれます。
細胞膜がこのような構造をしていることによって、細胞膜全体は細胞内外の環境になじみ、内側には疎水性の脂肪酸が充満しているため細胞の内外をしっかり遮断することができるようになっているのです。

活性酸素はなぜ身体に悪い??

「活性酸素が身体に悪い」というのは皆さんもよく聞いたことのある言葉だと思います。活性酸素とは、代謝の過程で生成される反応性の高い(つまり酸化力の高い)酸素のことです。通常、物質を構成している元になっている原子はそれぞれの電子殻内の電子がペアになっていることで安定しているのですが、活性酸素では、最外殻(電子の通る軌道の一番外側の部分)に「不対電子」と呼ばれるペアになっていない電子を持つために、他の分子から電子を奪うか与えることによって安定しようとする性質を持ちます。活性酸素はこの反応性の高さにより、体内のたんぱく質・脂質・核酸にダメージを与えることで、健康な細胞にダメージを与える連鎖反応を引き起こすのです。

特に、活性酸素は、脂質過酸化反応を通して、細胞膜の脂質二重層にダメージを与えてしまいます。細胞膜がダメージを受けると、細胞内の酵素活性が低下したり、DNAの損傷を引き起こしたりすることもあります。DNAが損傷すると、複製や転写といった、細胞の増殖に必要な機能を妨害してしまうため、非常に大きなダメージとなります。

活性酸素は、体内に取り込まれた食物と化学物質の代謝過程で生まれるものであり、生きている限りこれを避けて通ることはできません。私たちの身体には、活性酸素を制御する機序が備わっているのですが、現代生活では、活性酸素が過度に生成される状況になることが多く、活性酸素を除去する作用が追い付かなると、細胞の損傷箇所を修復する働きとのバランスがとれなくなり、体内の細胞がダメージを受けることになります。これが、「酸化ストレス」が強い状態ということです。

細胞膜を健康に保つ脂肪酸

適切な細胞機能のためには、細胞膜の二重層をしっかりと形成させることが重要です。そのためには、材料となる飽和脂肪酸やコレステロール、必須脂肪酸を適度に組み合わせて供給することが欠かせません。

飽和脂肪酸やコレステロールは、膜の形成と安定を助け、必須脂肪酸である不飽和脂肪酸は、膜の滑らかな流動性の維持を助けます。不飽和脂肪酸の中でも、オメガ3系の不飽和脂肪酸とオメガ6系不飽和脂肪酸では、細胞膜において相反する働きを持ち、オメガ6は細胞膜を硬くする作用を持ち、オメガ3は細胞膜を柔らかくするという性質があります。身体が生きていくためには、どちらの作用も必要で、両方の機能がしっかりと働くことによって、膜の適度な流動性が保たれます。さらに、脂肪酸の種類は、体内の炎症とも大きな関係があります。オメガ3と6の間では変換ができないため、両方をバランスよく摂る必要があります。

また、トランス脂肪酸(人工的に作られた水素化油脂)は細胞膜を硬化させ、細胞の正常機能を妨げるため、極力避けるべきです。

活性酸素の原因となるものとは?

通常の代謝過程によっても生成されている活性酸素ですが、活性酸素を過度に生成させて体内の酸化ストレスが引き起こす要因となるものは色々あります。

過労や激しい運動、トランス脂肪や酸化した植物油、アルコールの摂りすぎ、重金属、農薬、X線・紫外線・大気汚染・煙草の煙・水質汚染・工業溶剤のような環境毒素なども酸化ストレスを引き起こす要因となります。

 

血液検査から見る体内の酸化ストレスの状態について

酸化ストレスの影響によって全身の細胞膜が弱くなっているとき、赤血球の細胞膜も障害を受けて壊れやすくなっています。そこで、血液検査の結果から溶血(赤血球が壊れること)の有無を調べることで、酸化ストレスの度合いを予測することができます。詳しくは「間接ビリルビン」の項目をチェックしてみてください。

また、酸化ストレスが大きいときには、間接ビリルビンだけでなく、網状赤血球血清鉄なども高値になる傾向が見られますので、血液検査データがある場合はぜひチェックしてみましょう。

体内の慢性炎症が強い場合も、かなり酸化ストレスが強い状態であると言えますので、要注意です。慢性炎症の有無は高感度CRPフェリチン値からも予測することができます。

そして活性酸素の害を防ぎ、細胞膜を元気に保つには、抗酸化物質の摂取が欠かせません。抗酸化作用がある栄養素としては、ビタミンEやC、ビタミンA、フィトケミカル、グルタチオンなどが挙げられます。これらの抗酸化物質については、またの機会に詳しく書いていきたいと思います。

また、不足しがちなオメガ3系の脂肪酸をしっかりと摂ることも大切です。

基本的にはこれらの栄養素は食品からとることが望ましいのですが、食生活や生活習慣によっては不足してしまうこともあるため、サプリメントによる摂取が有効な場合もあります。

 

まとめ

生きている限り、酸化ストレスを避けることはできないけれど、現代人の生活では酸化の害を受ける機会が多く、特に、ハードな日常生活を送っている方や、血液検査の結果から、高いストレス状態や体内の炎症、赤血球の損傷などがみられる場合などは要注意。

ストレスを避ける生活習慣や、脂肪酸の摂り方、抗酸化物質の摂取などを心がけることが大切である。