「副腎疲労症候群」は存在しない?!副腎疲労神話と、副腎機能を改善するための4つのポイントについて

注目の「副腎疲労症候群」の本質について解説します。

(副腎の機能については、「小さいけどかなり重要!副腎の働きについて」で解説しています。)

「副腎疲労症候群」とは

「副腎疲労症候群」(アドレナルファティーグ)とは、度重なるストレスによって副腎が疲弊して副腎からのホルモン分泌に弊害が起こり、 倦怠感や無気力感などの疲労症状が出るものとして、1990年代に米国の医師ジェームズ・L・ウイルソンによって提唱された概念です。

「医師も知らないアドレナルファティーグ」

 

「副腎疲労」という言葉は日本でも10年前ぐらいから注目されるようになり、書籍が出たりネットで情報もたくさん見られるようになりました。

副腎はストレスコントロールのために重要な役割を持つ臓器ですので、ストレスや慢性炎症などがあると、それに対処するために副腎からコルチゾールが出続ける状態になります。

このような状態が続くと、今度はだんだん副腎から出るはずのコルチゾールなどのホルモンが出なくなってきます。

すると、血糖値をあげることもできなくなり、低血糖状態になり、さまざまな不定愁訴を引き起こします。

例えば、朝起きれない、起きてもぼーっとする、気力がわかない、ものわすれ、たちくらみ などの症状がある場合は要注意です。

さらに、副腎と甲状腺は密接な関係にあるため、副腎がうまく機能していないと甲状腺機能も低下してしまいます。

甲状腺機能低下を改善するために自分でできること
自分でできる甲状腺機能低下を改善する方法について解説します。

 

しかし、実際には、
トレスのせいで「副腎が疲弊して機能しなくなる」というエビデンスはない
と言われています。

明らかな副腎の疾患(アディソン病、副腎萎縮、または二次性副腎不全など)によって副腎が機能しなくなるということはもちろんあるのですが、そういった疾患でもない限り、副腎自体が疲れてしまってホルモンを出せなくなる、ということはないことがわかっています。

副腎からホルモンが出る仕組み

それではなぜ、副腎からホルモンが出なくなってしまうのでしょうか。

それは、副腎からホルモンが出る仕組みを知ることで説明がつきます。

私たちの身体はストレスに直面すると、神経系を通じて脳の視床下部に情報が送られます。(ちなみに「ストレス」とは、不安やトラウマなどといった精神的ストレスだけでなく、過労、感染症、手術、環境の変化、激しい運動など、物理的なストレスも含まれます)

すると、次のような反応が起こります。

視床下部→下垂体へ「副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン」(CRH)を出す。→下垂体は副腎へ「副腎皮質刺激ホルモンを出す」(ACTH)→それを受けた副腎がコルチゾールなどを出す→これ以上副腎からホルモンが出すぎないように視床下部と下垂体へ負のフィードバックがかかる。

つまり、副腎から出るホルモンは、視床下部と下垂体との連携によって調整されているということです。この視床下部‐下垂体‐副腎の関係は、3つの臓器の頭文字(Hypothalamus視床下部 Pituitary下垂体 Adrenal gland副腎)をとって「HPA軸」と呼ばれます。

副腎機能低下の原因は、副腎自体が疲弊したからではなくて、ストレスがかかっても下垂体からのACTHを放出できなくなったことによってコルチゾールが出なくなる→つまり、「副腎疲労」の正体は、副腎に指令を出している脳との連携がうまくいかなくなった「HPA軸」の機能障害なのです。

HPA軸機能障害を自分で改善するための4つのポイント

「副腎疲労」の正体は、HPA軸機能障害による低コルチゾール症であるということがわかりました。

HPS軸が狂ってしまう原因は、過剰なストレスによって慢性的にコルチゾールが無理やり出させられることです。

コルチゾールの重要な働きといえば、炎症抑制・血糖上昇・抗ストレス・日内変動など。

そこで、以下の4つのポイントを意識することが、慢性的なコルチゾールの過剰分泌を防ぐために重要となります。

①慢性的な炎症を取り除く 

②血糖値の乱高下を避ける

③ストレス対策

④夜更かしをやめる

 

炎症に関しては、「腸の炎症によって引き起こされることとは?」「慢性炎症を作りやすい食事・減らす食事」も参照してください。

血糖値対策は、「血糖値を安定させる食事のポイント」や、「低血糖のサインと改善方法」でも解説しています。

 

ストレス対策については人それぞれですが、まずはいつも無理して頑張りすぎていないか、日ごろの生活を見直してみましょう。

(ストレスへの捉え方もかなり重要⇓)

「ストレスは役に立つ」と思うと、実際にそうなる?!ストレスを力に変える方法について。
「スタンフォードのストレスをチカラに変える教科書」に学ぶ、ストレスを味方につけ、「力に変える方法」について解説します。ストレスは「敵」ではなく、「味方」になる?!みなさんは、「ストレス」に対して、どのようなイメージを持っていますか?...

 

そして、これらの対策をするのはどれももちろんとても必要なのですが、手軽に今日からでも実行できるのに意外とできていないのが、④夜更かしをやめる だったりしませんか?

例えば、体調不調が気になっていて栄養療法に取り組んでいる方で、抗炎症や血糖コントロールを頑張っているのに、夜寝るのが夜中の1時とか2時とかでは、いつまでたっても体調が良くなることは難しいです。

理想は22時、遅くとも23時には寝ることができると、身体への負担がすごく変わってきますので、ぜひ早く寝ることを心がけてみてください。

まとめ

・副腎から分泌されるホルモンは、視床下部‐下垂体‐副腎の連携=「HPA軸」によって調整されている。

・「副腎疲労」の正体は、HPA軸(視床下部‐下垂体‐副腎)機能障害である

・HPA軸機能障害を改善するポイントは、抗炎症対策、血糖値を安定させる、ストレス対策、睡眠をしっかりとる の4つ!

 

 

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