疲れやすいのは貧血のせい??鉄欠乏性貧血によって起こる症状とその原因について

疲れやすい、朝起きられない、肩こりや頭痛、肌荒れなど、その不調の原因は鉄欠乏性貧血のせいかもしれません。貧血とは何か、貧血によってどんな症状が起こるのか、なぜ貧血が起こるのか、ヘモグロビン値が正常でも貧血の場合があるのか??など、貧血にまつわる疑問について説明します。

ヘモグロビン(血色素)と鉄の働き

血液検査のヘモグロビン値とは、赤血球の中に含まれる赤い色素成分=ヘモグロビンの濃度を示しており、血色素量とも呼ばれます。

ヘモグロビンは、鉄を含む「ヘム」と、たんぱく質である「グロビン」から構成される複合たんぱく質で、血液中で酸素を運ぶ役割をします。

ヘモグロビンに抱き込まれている鉄は、酸素が多い所では酸素と結合し、酸素が少ない所では逆に酸素を解き放ち二酸化炭素を取り込むという仕組みになっています。

ヘモグロビンの材料である鉄が不足すると、赤血球やヘモグロビンの数が足りなくなり、身体の隅々まで酸素を送り届けることができなくなってしまいます。

この状態を、鉄欠乏貧血と言います。

赤血球数が正常でも、ヘモグロビンの数が少なければ(つまりヘモグロビン値が低い)、赤血球の機能が不十分な状態であると言えます。

貧血によって、どのような症状が起こるのか

体内の細胞が正常に働くためには酸素が不可欠です。鉄欠乏性貧血になると、慢性的に末梢組織へ酸素が十分いきわたらない状態が続きます。酸素が不足すれば、身体はエネルギー不足となり、様々な症状が出てきます。

貧血と言えば、立ちくらみやめまい、顔色が悪いなどの症状が有名ですが、その他にも、次のような症状が出ることもあります。

疲れやすい、朝起きられない、集中力低下、耳鳴り、免疫力の低下、頭痛、肩こり、腰痛、冷え、寒さに敏感、寝起きが悪い、むくみ、湿疹、便秘、下痢、動悸、息切れ、頻脈、白髪、髪の毛が痛みやすい、爪が割れやすい、口角炎、月経異常、身体にあざができやすい、神経過敏、etc.

貧血によって食道の粘膜が萎縮して食道内が狭くなるため、食べ物を飲みこむときに飲み込みづらいと感じる場合もあります。

また、氷や土などをかじりたくなるといった症状が出ることもあります。(異食症と言います)

血液検査のヘモグロビン値について

血液検査で、ヘモグロビン値が男性では14.5ぐらい、生理のある女性では13を切るようだと、貧血であると言えます。(高齢者は生理的にヘモグロビン値が減るため、基準値はもっと低くなります)

理想値に達していても、脱水によって血液が濃縮されていてデータがマスキングされ値が上昇しているということもあります。

特に、ヘモグロビン値が16を超えているような場合は、脱水が疑われます。

鉄欠乏性貧血の原因として考えられること

鉄は、体内で繰り返しリサイクルされて利用される栄養素でもあるので、一日の所要量はごくわずかなのですが、非常に吸収されにくいため、欠乏しやすい栄養素の一つです。鉄が欠乏してしまう原因として考えられることには以下のようなものがあります。

①鉄やたんぱく質の摂取不足と吸収不足

鉄は吸収が難しく、不足しやすいミネラルの一つです。ヘモグロビン値は、鉄不足だけでなくたんぱく質不足でも低下します。また、赤血球を作るためにはビタミンB群も重要になってきます。鉄やたんぱく質、ビタミン不足は、食事をしっかり食べていないか、消化不良や腸内環境悪化が原因となっている場合もとても多く見られます。

②鉄需要が多い

成長期の子供は鉄の需要も高まります。また、妊娠中は優先的に胎児に栄養が供給されるため、妊婦さんは貧血になりやすいです。

成長期や妊娠中は特に、鉄に限らずビタミンやミネラルの需要が高まるので、しっかりと食事を摂る必要があるのは言うまでもありません。

鉄は脳の神経伝達物質の合成にも深くかかわっているので、不足すると精神状態にも影響を与えてしまいます。

成長期の子どもがイライラしやすくなったり、妊娠中や産後に気持ちが不安定になったりするのは、ホルモンバランスの変化だけでなく、栄養不足が大きな原因となっている場合も多いと考えられます。

③炎症性貧血

慢性関節リウマチや慢性感染症、ガンなど、体内に炎症がある場合は、体内での鉄の循環量が抑制されます。なぜなら、感染症の原因となる細菌やガン細胞も増殖する時に鉄を必要とするので、それを防ぐために「へプシジン」と呼ばれるホルモンが働き、体内の鉄循環量を抑制するという仕組みになっているのです。この場合、いくら鉄の摂取量を増やしても体内の「貯蔵鉄」ばかりが増え、ヘモグロビン値は増えず、病原菌やガン細胞はより多くの鉄を得ることになり、かえって体調を崩す原因となりかねません。

⓸出血による鉄喪失

女性で月経量が多い人は、毎月の鉄の喪失量が多くなります。鼻血によって出血が多い場合も注意が必要です。また、胃や大腸などの疾患、痔などがある場合も、出血による鉄損失が多くなります。消化管出血があっても血が便に混じってしまうため発見が難しく、症状がかなりひどくなってから発見されることも多いと言われています。

⑤スポーツによる鉄喪失

足の裏に衝撃の多いスポーツをしている人は、その衝撃で赤血球の膜が壊れる「溶血」が起こりやすくなります。裸足で踏み込む剣道や、格闘技、長距離ランナーなどは、要注意です。また、汗っかきの人や、激しい運動でたくさん汗をかくような人は、鉄に限らずミネラルをたくさん消耗するのでしっかり補給することが大切です。

体内の鉄は多すぎると害になる

人体にとって必須のミネラルである鉄ですが、その一方で、鉄には実は非常に強い毒性もあります。

なぜなら、鉄は酸化しやすい金属なので、体内の多すぎる鉄は過剰な活性酸素を引きおこす→簡単に言うと身体を錆びさせてしまいます。細胞内で鉄過剰が起こると、鉄は活性酸素を多く産生し、細胞の機能を低下させてしまうのです。

また、上記の通り、鉄は細菌やガン細胞のエサにもなりますので、「炎症性貧血」の場合に余計な鉄を入れると身体に害を与えてしまいます。

従って、貧血だからといって安易に鉄剤の服用やサプリメントの摂り過ぎると、鉄過剰を引き起こす可能性があるため注意が必要です。まずは胃腸の状態を改善したり、炎症対策を行ったうえで、必要に応じて鉄を補充するべきでしょう。

鉄が不足しても、過剰になっても、健康に大きな悪影響を及ぼすということです。

貧血を知るためのその他の項目

貧血は通常、ヘモグロビンや赤血球数、ヘマトクリットなどで判断されますが、これらの数値は意外と中等度以上の貧血でないと低下してきません。なので、ヘモグロビン値や赤血球数には問題がないけれど、実は貧血が進んでいるという場合も多く見られます。以下の項目も、貧血の有無を調べるのに役立ちますので参考にしてみてください。

MCV

MHC・MCHC

フェリチン

血清鉄

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