血液検査の「好中球」と「リンパ球」からわかること

自律神経のバランスをチェックするときに役立つ「好中球」と「リンパ球」について解説します。

白血球の5分画

血液を採取し、固まらないようにして試験管に入れて遠心分離器にかけると2層に分かれます、上層はやや黄白色がかった透明で、下層は赤い塊です。

この上の層は血液中の液体成分で、「血漿」と呼ばれます。

血漿にはたんぱく質(アルブミンやグロブリン、フィブリノーゲンなど)や脂質(コレステロールなど)が溶け込んでいます。

下の層は細胞成分で、その表層には白っぽい層が重なっており、ここには白血球と血小板が含まれます。下の赤い塊は赤血球です。

白血球は、好中球(Neutroニュートロ)・好酸球(Eosinoエオジノ)・好塩基球(Basoバソ)・リンパ球(Lymphoリンホサイト)・単球(Monoモノサイト)の5つに分けることができます。これを「白血球の5分画」といいます。

好中球とリンパ球の割合から自律神経の状態を推測する

好中球とリンパ球には、対照的な特徴があります。

好中球には交感神経が働いたときに分泌される「ノルアドレナリン」の受容体があり、交感神経が緊張すると増加します。

一方、リンパ球には副交感神経が働いたときに分泌される「アセチルコリン」の受容体があり、副交感神経が優位になるとリンパ球が増加します。

従って、リンパ球と好中球の割合は、その時点での自律神経のバランスを示します。

日中の活動時には交感神経優位になり好中球の割合が増え、夜間の睡眠時や休息時には副交感神経優位となりリンパ球の割合が増えるという日内変動が見られます。

あるいは、気圧の変化によっても反動がり、気圧が高いと好中球が増え、気圧が低いとリンパ球が増えるという変化も見られます。

また、通常は男性よりも女性の方がリンパ球が多い傾向がみられるようです。

交感神経と副交感神経の切り替えがうまくなされていれば、そのバランスがうまく保たれますが、過労や悩み事といったストレスが長く続くことで自律神経のバランスが崩れ、常に交感神経が過度に緊張した状態になってしまうこともあります。

また、寝不足などのストレスによってリンパ球は激減するといったように、その日の体調によっても大きく変わります。

個人差もありますが、好中球はだいたい 55~60%(50~60)ぐらいが丁度よく、好中球が高い場合は交感神経が過緊張状態であると考えられます。

一方、副交感神経を表すリンパ球は 30%(30~40)ぐらいが良いと言われています。

ちなみに、アスリートが「ゾーン」に入った時に最高のパフォーマンスができるようになるといいますが、これは交感神経と副交感神経の両方が同じぐらい活発に働いている状態であると考えられます。

簡単に言えば、程よく緊張しているけれど心は冷静といった感じで、交感神経と副交感神経の両方がどちらも活発に働き、かつバランスが取れているという状態です。

好中球とリンパ球の働き

正常範囲内の自律神経のバランスであれば、 交感神経が血圧を上げ、やる気や集中力を上げていき、 夜になると副交感神経が優位になりリラックスし眠りにつくことができます。

好中球は細菌感染を防いだり、ウイルスとたたかったり、上皮の再生を促したりする大切な働きもしています。

一方、ガン細胞に対して働いてくれるのはリンパ球です。
ガンに罹患された方は、好中球の割合が増えてリンパ球の割合が少ない人が多いようです。

好中球が過剰に増え、リンパ球の数が極端に減っている場合、免疫力が相当落ちてしまっていることが予測されます。

リンパ球の数は、白血球数×リンパ球の割合(%)÷100で求めることができます。

特に、1500以下だと免疫力が落ちてしまっている状態であると予測されます。

好中球の比率が高い時

交感神経と副交感神経は働き過ぎても働かなさ過ぎても支障が出てきます。

好中球とリンパ球のバランスが大事、ということになりますが、バランスが崩れて好中球が高くなりすぎている時は、身体の中でどのようなことが起きているのかというと、、

・交感神経緊張があり、日常的にストレス過多であると予測できる
・不眠、イライラや不安なども起こりやすい
・全身の血流障害を引き起こし、手足の冷えや低体温が起こりやすくなる
・消化器の働きも悪く、胃潰瘍や潰瘍性胃腸炎にかかりやすい
・関節炎や腰痛、頭痛などがおこりやすい
・活性酸素が増え正常な細胞が傷つきやすい
・ガンにかかりやすい
・好中球は細菌感染や風邪をひいた時にも上昇する

交感神経の過緊張を作る大きな原因の一つとして、低血糖症が挙げられます。

低血糖症がある場合は身体への大きなストレスが常にかかっている状態なので、好中球の値が高くなる傾向がみられるのです。

特に、好中球が80%以上、またはリンパ球が20%以下というように好中球の割合がかなり増えてしまっている場合、ストレス状態がかなり強く、コルチゾールが過剰に分泌されている状態であると予想できます。

この場合、「副腎疲労」になっている可能性がとても高いでしょう。

ちなみに、副腎疲労の検査として用いられるコルチゾールの唾液検査は一回20000円ぐらいかかりますが、この好中球とリンパ球の割合を調べる方法なら簡単で安上がりな方法であると言えます。

(健康保険が適用されれば負担は数百円、白血球像だけなら自費でも2000〜4000円程度で済みます)

リンパ球の比率が高い場合

副交感神経が適度に働いていると、血管が拡張して血流がよくなり、消化器の働きも高まりますし、睡眠の質も高まります。

しかし、副交感神経もたくさん働けば働くほど良いというわけではありません。

なぜなら、副交感神経が働き過ぎてリンパ球の数値が高すぎるような場合は、だるさや疲労感が抜けない状態になってしまうからです。

さらに過度な副交感神経優位の状態が長く続くと、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、うつ病などの精神疾患になったり、身体の活動量が減ることで筋肉の発熱量が低下し、いずれは交感神経優位の場合と同様に低体温を引き起こす原因となります。

また、交感神経優位の状態が長年続き過ぎた結果、自律神経のバランスが崩れてしまって機能しなくなり、リンパ球が上がって好中球が下がるといった状態になることもあります。

特に、長年の大きなストレスを抱えている人や、低血糖症甲状腺機能低下などによるエネルギー不足があるような人は要注意です。

従って、好中球やリンパ球の数値だけを見て判断するのではなく、そのほかのデータや体調を見て総合的に判断して対策を立てていくことが大切です。

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