線維筋痛症を栄養療法の観点から改善する方法について解説します。
線維筋痛症とは
線維筋痛症とは、全身に強い痛みが繰り返す病気で、日本では推定200万人いると言われています。線維筋痛症は一般的な検査をしても原因が見つからないにも関わらず、全身の痛みや身体の一部の痛み、こわばりや睡眠障害、疲労感や倦怠感、うつ状態などさまざまな症状が生じることが知られています。
この病気の原因ははっきりとわかっていないと言われていますが、セロトニンやドーパミンなどの痛みを抑える物質が充分に機能していないことによって起こるのではないかと考えられています。
線維筋痛症は、過労やケガ、病気、出産、心理的なストレスがきっかけで起こる場合も多く、30代~60代の女性に多く発症すると言われています。
ミトコンドリア機能と線維筋痛症
私たちの体内の細胞機能が働くためには、細胞内にある「ミトコンドリア」が生成したエネルギー=ATPを使う必要があります。言い換えれば、ミトコンドリアは体内の重要なシステムのすべてをコントロールしているのです。ATPがしっかり産生されていないと、細胞機能が充分に働かなくなるので慢性的な疲れを感じたり、様々な疾患を引き起こすことになります。
例えば、神経細胞がエネルギー不足になれば認知障害が起きるし、心筋細胞のミトコンドリアに問題があれば心不全になったりもします。
そして、筋細胞がエネルギーを作れなければ線維筋痛症が起こるということが考えられます。
ミトコンドリアと同じく細胞内の小器官の一つである「小胞体」は、細胞内のたんぱく質の向上として重要な役割を担っています。ミトコンドリアと小胞体は、互いに影響しあいながらその機能を保っています。小胞体とミトコンドリアには接触部位があり、どちらかの機能が落ちるともう一方の機能低下に影響する、という関係性です。
したがって、ミトコンドリア機能を上げるためには小胞体機能を上げることが重要となります。
ところで、筋肉の運動にはカルシウムが大きく関係しています。筋原線維の周りにある小胞体にはカルシウムが蓄えられていて、これが放出されると筋肉が収縮します。逆に、小胞体にカルシウムが取り込まれると筋肉が弛緩します。この、小胞体へのカルシウムの移動の際にATPが必要となるのですが、ATPが不足すると筋肉細胞内にカルシウムがどんどんたまってしまい、筋収縮が継続した状態になり、これが筋痛の原因になるというわけです。
血液データからATP産生を調べる
通常の血液検査のデータから、ATPの産生が足りているかどうかを予測する方法があります。
まずは、コレステロールと中性脂肪の値を見てみましょう。コレステロールや中性脂肪はATPを使って合成されますので、ATP不足であれば当然値が低くなってきます。目安としては、コレステロールが180以下、中性脂肪が90以下であれば、値が低いと言えます。
さらに、尿酸値が低いというのも大問題です。尿酸を合成する酵素はリンによって合成抑制されるという性質を持っているのですが、ATPが充分に産生されていないと体内でリンが余ってくるため(ATPはリンを使って作られるので。)その余ったリンが尿酸の合成抑制をかけるのです。つまり、尿酸値が低い=ATP不足が予測できる、と言えます。
尿酸値は高すぎると痛風を引き起こすことからあまり良いイメージがないかもしれませんが、尿酸にはビタミンCよりも高い抗酸化力がありますので、実は、適度な尿酸は身体にとって非常に大切な役割を果たしてくれているのです。尿酸値が3.0以下だと、アルツハイマーやパーキンソン病などのリスクも高まると言われています。目安としては、4.0以下だと低いと考えられます。
ATP産生を増やすための対策
ATP低下によって線維筋痛症が起こるのであれば、ATP産生をしっかりできるようにすれば良いということになります。
ATP産生量が低下する要因としてはさまざまなことが考えられます。栄養素の中で特に重要となるのは、マグネシウムや鉄、亜鉛、銅などのミネラル、ビオチン、コエンザイムQ10、αリポ酸、Lカルニチン、タウリンなどが挙げられます。これらの栄養素をただ補給するだけでなく、胃腸の状態を整えて摂取した栄養素をしっかりと吸収できる状態を作るということがとても大切であると言えます。
また、ミトコンドリアと小胞体の機能を上げるということも非常に重要な対策となります。(詳しくはこちら)
まとめ
・線維筋痛症はミトコンドリア機能=ATP産生低下と非常に関係が深い
・コレステロール値や中性脂肪、尿酸値が低い場合、ATP産生の低下が疑われ、線維筋痛症などの症状を引き起こしやすくなる
・線維筋痛症を改善するためにはATP産生を促進する栄養素の補給だけでなく、胃腸の状態を整えることが重要。
・線維筋痛症の改善のためにはミトコンドリア機能対策や小胞体ストレス対策も有効