人間はなぜ、ビタミンC合成能を失ったのか?!ビタミンCについて深堀してみた

健康を維持するために欠かせないビタミンC。

ビタミンCってなんとなくカラダに良さそうなことはわかっているけど、
実際に何がそんなに大事なの??

と、思っている人はぜひ読んでみてほしい内容です。

ビタミンC発見の歴史

ビタミンCは、1900年代初めに、壊血病の予防因子としてオレンジ果汁から抽出され発見された物質です。化学名は「アスコルビン酸」と呼ばれます。

古代ギリシアのヒポクラテスは、ビタミンC欠乏症(壊血病)とみられる症状を克明に記録していることから、ビタミンCの欠乏症は古代の時代から多くの人を苦しめてきた病気であったことがわかります。

中世のヨーロッパでは天候の異常などによって凶作が発生するたびに新鮮な野菜や果物が大量に不足したことによって治療法がわからない「壊血病」の流行がおこり人々を苦しめました。

15世紀末(中世の終わりごろ)のヨーロッパの大航海時代も、船員たちに最も恐れられていたのもこの「壊血病」でした。

壊血病にかかるのは船乗りや都市の住民、長い戦争を続けている兵士などでしたが、その原因や治療法は長い間全く手がかりがありませんでした。

18世紀になり、ジェームスリンド医師が初めて柑橘類の摂取によって壊血病を治すことができることを発見しました。

その後1900年初頭にようやくオレンジやレモン果汁の成分の「壊血病予防因子」をみつけ、「ビタミンC」として命名されました。

ちなみにビタミンCの別名=「Ascolbic Acid(アスコルビン酸)」とは、「壊血病に対抗する酸」という意味です。

その後、1970年代になり、「分子栄養学」の創始者でもあるライナスポーリング博士は、ビタミンCは欠乏症を予防するだけでなく、グラム単位のビタミンC摂取をすることで風邪症状の軽減やがん予防に役立つことを発見しました。

ビタミンCの役割

ここで、ビタミンCの重要な役割についておさらいしておきましょう。

コラーゲン生成に欠かせない

ビタミンCはコラーゲンを生成する際に欠かせません。コラーゲンとは、細胞と細胞をノリのような役割をするタンパク質で、身体のほとんどすべての組織を組織を形成するために必要とされます。皮膚や骨の健康のためにも不可欠なものとして知られていますよね。ビタミンCが不足するとコラーゲンが進まず、毛細血管が脆くなる、歯茎から出血しやすくなる、傷の治りが遅くなる、骨や血管、臓器が弱くなる、神経症状など、壊血病の症状が出ます。

強力な抗酸化作用

ビタミンCには抗酸化作用があるため、細胞が酸化することによる障害を防ぎ、加齢によるガンや、心臓疾患を防ぐ、などといった働きがあります。尚、ビタミンEはビタミンCと併用することで効率的に抗酸化作用を発揮することができます。

免疫力を高める

ビタミンCは免疫を刺激し、白血球の働きを助け、細菌やウイルスを抑える力を高めてくれます。白血球には、血中に含まれるビタミンCの80倍のビタミンCが含まれていると言われており、病気にかかったときやストレス時には、さらにビタミンCの必要量が上がることがわかっています。

抗ストレス作用

副腎には、血中濃度の150倍のビタミンCが存在すると言われています。ビタミンCは、副腎がコルチゾールなどのホルモンを産生するときの材料となるため、副腎は特にビタミンCを必要としている臓器なのです。また、ノルアドレナリンというホルモンを産生するためにも、ビタミンCが使われます。コルチゾールやノルアドレナリンは、ストレスに対抗するために分泌されるホルモンです。だから、ストレス時にはビタミンCの必要量が上がるのですね。

ガンや風邪に効力がある

1970年代、アメリカのライナスポーリング博士は、グラム単位のビタミンC摂取によって、風邪やガンなどに効力があるという報告をしました。ビタミンCは、乏症を予防するだけでなく、最適量を摂取することで、風邪を早く治す働きや、発がん物質を抑制する働きがあることがわかっています。

腸管でのミネラルの吸収を良くする

鉄や銅、亜鉛、カルシウムなどのミネラルは、ビタミンCと一緒に摂ることで腸からの吸収率がアップします。

アミノ酸を代謝して神経伝達物質を作る

セロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質を合成するときにも、ビタミンCが使われます。

トリプトファン(必須アミノ酸の一種)セロトニン

チロシン(必須アミノ酸フェニルアラニンから作られるアミノ酸)ノルアドレナリン

の反応の際にビタミンCが必要。)

甲状腺ホルモンを作るためにも必要

また、甲状腺ホルモンのチロキシンを作る際にも、ビタミンCは必要となります。チロキシンは、体内の代謝速度を調整するホルモンで、全身の細胞に影響を与えます。

その他にも、LDLコレステロールの酸化抑制、カルニチン(アミノ酸)の合成促進、胆汁酸合成の促進、抗ヒスタミン作用、シミの予防などなど、ビタミンCには実に様々な働きがあります。

ビタミンC欠乏は、人間の宿命?!

ヒト以外の多くの動物は、ビタミンCを合成することができる!

「ビタミンC」が地球上に存在するようになったのは、いつ頃だと思いますか?

ビタミンCは、10億年前に生物が誕生した原始の海に、すでに存在していたといわれています。ビタミンCは生き物の代謝に深く関わっており、生物の進化のかなり早い段階に合成が始まっていたようです。

生物が生きるために不可欠なビタミンCですが、ヒトはビタミンCを体内で作ることができないので、必ず外から摂取する必要があります。

実は、ヒト以外のほとんどの生物はビタミンCを体内で合成することができます。

魚類や両生類は腎臓でビタミンCを作るし、多くの鳥類や哺乳類は肝臓でビタミンCを作ることができます。

ところが、人間を含む霊長類は、約2500万年前にビタミンCの合成能力を失ったといいます。

ちなみに、ビタミンCを体内で作ることができない動物は、モルモット、フルーツバット(果実食性コウモリ)、紅肛門鳴き鳥(熱帯産のヒヨドリ科の鳥)、そして、人間を含む霊長類。

数ある動物の種類の中でも、ビタミンCを体内で作ることができない動物の方がレアケースなんですね。

ビタミンCを作れないのは人類の遺伝障害?!

ビタミンCは、ぶどう糖を材料に4種類の酵素の働きで作られます。

人間の肝臓にも、ビタミンC合成に必要な酵素のうち、3種類までは揃っているのですが、最後のステップに必要な1種類(Lグロノラクトンオキシターゼという酵素)だけが欠けています。

栄養療法の世界的権威、ジョナサンライト医師によると、「血液中のビタミンC欠乏は、人類全体に共通した遺伝的障害である」としています。

ビタミンCを合成することができる動物の場合、ストレス時にはビタミンC合成量が著しく増加することがわかっています。ガン物質を与えた実験でも、猛烈な勢いでビタミンCが合成されたと報告されています。

人類はなぜ、ビタミンC合成能を失ったのか?!

ビタミンC研究の第一人者であるライナスポーリング博士は、「人類がビタミンC合成能を失ったのは、脳を守るためだ」と言っていたのだそうです。

人間を始めとする霊長類は、社会生活に適応しながら進化する中で、脳容量が大きくなり、他の動物に比べて重量が重い。そのため、脳のエネルギー源となるブドウ糖の需要量も増えたわけです。

そこで、ビタミンCの材料は何だったか、思い出してみてください。そう、ブドウ糖がビタミンCの材料になるのですよね。もしも身体がビタミンCをたくさん必要としている時に、自分でビタミンCを合成する力があれば、ブドウ糖は激しく消費されることになります。

脳が大きい霊長類にとって、脳機能を維持するためにはブドウ糖が重要であるため、2500万年前の人類の遺伝子は、あえてビタミンC合成能を失うことで、ブドウ糖を温存するという道を選んだということでしょうか。また、果実など、ビタミンCを外から容易に摂取できる環境が整っていたという点も、ビタミンC合成能を失った一つの要因となっているのかもしれません。

ネイティブアメリカンが野菜や果物を食べなくてもビタミンC欠乏症にならない理由とは??

ビタミンCの欠乏症である壊血病は、古くから原因不明の奇病として恐れられてきました。壊血病の予防には柑橘類や野菜が有効であるということが知られるようになるまで、多くの人の命が壊血病によって失われました。日本では、一年を通して野菜が収穫できたことや、雪の多い地方では漬物を食べていたため、壊血病はあまり問題になることはなかったのだと考えられます。しかし、長期間にわたり航海を続けたり、作物を栽培する条件が厳しい地域に住んでいたヨーロッパの人々にとっては、大変な病気だったのです。

20世紀の初め頃、アメリカの歯科医であるプライス博士は、カナディアンロッキーの奥地に住んでいたネイティブアメリカン(インデアン)に出遭いました。彼らは冬になると、ビタミンCの摂取源となるような植物は育たない土地に住み、ほとんど野生の狩猟に頼って生きていたのですが、壊血病にかかることはなかったのだそうです。

不思議に思ったプライス博士が彼らにその理由を尋ねると、彼らは

「ヘラジカや熊の副腎を食べて、病気を防いでいる」

と教えてくれたのだそうです。

私たち人間と同様、ヘラジカや熊の副腎には多くのビタミンCが多く含まれているのです。

ネイティブアメリカン達は何世紀にもわたって、動物の特定の内臓を食べるということを学び、経験的にビタミンCを摂取する術を知っていたとは、昔の人の知恵って本当にすごいですね!!!

 

 

 

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