「新・栄養療法」に学ぶ、トリプトファン不足の原因はたんぱく質の摂りすぎ?!の不思議

必須アミノ酸の一つであるトリプトファンに関する疑問について解説します。

トリプトファンとは

トリプトファンは、たんぱく質を豊富に含む食品に多く含まれている、必須アミノ酸の一つです。

トリプトファンは、神経伝達物質であるセロトニンや睡眠ホルモンのメラトニンに変換されます。また、トリプトファンからはナイアシン(ビタミンB3)も生合成されます。

うつや不眠と関係するセロトニンやメラトニンの原料となることから、「うつ予防にはトリプトファン」「よく眠れないときにはトリプトファン」ともよく言われています。

ムサシの「クアン」にトリプトファンが含まれていない理由

アミノ酸サプリで有名な「MUSASHI」の主力商品の「クアン」。

ヘルスメンテナンスやパワーアップ目的で摂取することを目的としたアミノ酸サプリメントということで、

「筋肉の成長に役立つ11種類のアミノ酸がバランスよく配合されています。」

とあります。

商品詳細

主成分
L-リジン、L-ロイシン、L-ヒスチジン、L-アルギニン、L-イソロイシン、グリシン、L-バリン、L-チロシン、L-トレオニン、L-フェニルアラニン、L-メチオニン

何かお気づきではないでしょうか。

そう、必須アミノ酸のうち、トリプトファンだけ含まれていません。

私は数年前にこの「クアン」を飲んでいて、ふと成分表を見てこのことに気づき、気になってお客様相談室に電話して聞いてみたことがありました。

担当の方の回答は、「トリプトファンは脳血液関門を通過する時に他のアミノ酸と競合してしまうので入れていない」というものでした。

私はその当時は、それを聞いても「へっ??? どゆこと?!」という感じだったのですが、よくよく調べてみると、なるほど~!という答えが見えてきました。


特に参考になったのが、↑このジョナサンライト著「新・栄養療法」という本でした。

うつ病治療とトリプトファンについて

「新・栄養療法」を元に、トリプトファンの効能とうつ病との関係を以下にまとめてみました。

①トリプトファンはうつ治療に効果がある

トリプトファンには、よく眠れるようにしたり、うつを軽くしたりする作用がある。この方法はうつの治療に広く用いられており、一般的に処方されている抗うつ剤と同等の効き目が得られる上に、薬と違って比較的無害で、短期的使用でも長期的使用でも、服用を急にやめても心配はないと言われている。しかし、そうした働きをするためには、十分な量のトリプトファンが脳の組織中に存在する必要がある。

②高たんぱく食によってうつが悪化する人は、脳内のトリプトファンが足りていない可能性がある

うつや不眠症に悩まされていて、高たんぱく食を始めてから悪化した人の場合、普通の人に比べてトリプトファンの代謝に問題がある体質である可能性が考えられる。
このような体質の人の場合、(以下の③に示す理由で)高たんぱく食によって脳内に送られるトリプトファンの量が減少し、さらに症状が悪化することがある。

③トリプトファンには、他のアミノ酸と競合して脳内に入りにくくなるという性質がある

トリプトファンは、他のアミノ酸(チロシン・フェニルアラニン・イソロイシン・ロイシン・バリンなど)と同じルートから脳内に吸収される。

トリプトファンはほかのアミノ酸に比べて、ほとんどのたんぱく質食品に比較的少量しか含まれていないアミノ酸である。

従って、高蛋白食品を食べた場合には、トリプトファンの血中値は高まるが、それ以外のアミノ酸の数値も一斉に高まることになり、トリプトファンが脳内に取り込まれにくくなってしまう。

トリプトファンを効率よく脳内に吸収させるためには炭水化物が必要!

ジョナサンライト氏の臨床経験によると、トリプトファンのサプリメントは炭水化物と一緒に摂り、高蛋白食品はその前後1時間半ずつの間は摂らない方が、トリプトファンの効果が表れやすいとのことです。また、ナイアシンアミドがトリプトファンの分解を妨げる働きを持つことから、トリプトファンが脳内に吸収される前に分解されるのを防ぐために、トリプトファンをナイアシンアミドと一緒に摂ると良いことを指摘しています。

トリプトファンを炭水化物と一緒に摂った方が良い理由は、炭水化物を摂取したときに分泌されるインスリンには、脳内にトリプトファンを取り込みやすくする作用があるからです。

炭水化物を摂取すると、血糖値が上がりますよね。すると、その血糖値を下げるために、膵臓からインスリンが分泌され、血中のインスリンの濃度が上がります。インスリンには、トリプトファンと競合するアミノ酸であるBCAAが骨格筋に取り込まれるのを促進する作用があるので、トリプトファンが効率的に脳内に入りやすくなるというわけです。

従って、トリプトファンを脳内に効率よく吸収させるためには、たんぱく質と一緒に適度な炭水化物も摂った方が良いということです。

ちなみに、「新・栄養療法」はもう絶版になってしまっていて、Amazonでは4000円ぐらいとなっているようです。初版が1996年の古い本だし、分厚いしちょっと読みにくいところもあるのですが、栄養療法の基本的な考え方が網羅されていて、薬に頼らずに現代医学では治療が難しいとされるような症状まで次々と改善していくドラマがかなり面白く、とてもためになる本なので、栄養療法に興味がある方にはぜひ一度手に取ってみてほしい本の一つだと思います!

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