「メチレーション」と精神疾患について

 

栄養療法による精神疾患へのアプローチを考えるとき、「メチレーション」の知識が欠かせません。そこで、この「メチレーション」と精神疾患の関係について、なるべくわかりやすく説明していきます。

脳内の神経伝達の仕組み

「メチレーション」の話の前に、神経伝達物質がどのように脳内を伝わっているのかを説明していきたいと思います。

私たちの脳の中には約千億個もの脳細胞があると言われています。

脳細胞というものが発見されたのは、1800年代の初め。発見から数年の間は、脳細胞同士は直接つながっていて複雑な電気回路を形成していると信じられていたといいます。ところが、1880年代になって、脳細胞と脳細胞は直接接触せずに、隣接する脳細胞に信号を送ってコミュニケーションをしているということが発見されました。直接接触していないということは、脳細胞と脳細胞の間にはごく小さな隙間があるということです。この小さな隙間のことを「シナプス」といいます。

脳細胞が活動するとき、脳細胞は神経伝達物質をシナプスを放出します。非常に多くの脳細胞が活動すると、思考や行動が起こります。

脳細胞にはそれぞれの神経伝達物質に対する受容体(たんぱく質の塊)が埋め込まれています。ほとんどの受容体は、わずか一種類の神経伝達物質の信号だけを受け取るという性質があります。例えば、「セロトニン」の受容体はセロトニンのみによって活性化され、それ以外の神経伝達物質によって活性化することはありません。

ところで、シナプスに放出された神経伝達物質は、隣接する脳細胞の受容体に向かうだけでなく、元の脳細胞へ迅速に戻って再利用されるというシステムもあります。この場合、神経伝達物質は「輸送たんぱく」によって元の脳細胞へと運ばれて、「再取り込み口」から取り込まれ再利用されるのです。脳神経におけるシナプスの神経伝達物質の量は、この「輸送たんぱく」と「再取り込み口」の量と働きで決まります。

そして最終的には、役目を終えた神経伝達物質は分解されて消えていきます。

「メチレーション」とは??

 

ここからやっと、「メチレーション」の話です。

「メチレーション」とは、メチル基(CH3)がある物質に結合し、様々な化学反応を起こすことです。

そしてこのメチレーションは、DNA・RNA合成、解毒、たんぱく質、酵素の合成、葉酸の代謝、神経伝達物質の合成(ドーパミン、セロトニン)、テロメア(アンチエイジング)の保護、エストロゲン調整、ミトコンドリアの保護、炎症の抑制、葉酸の代謝、コエンザイムQ10の合成と代謝など、体内のさまざな働きに関わっています。

 

低メチレーションと高メチレーション

メチレーションの状態は、個人差があります。

どういうことかというと、身体の中で丁度良い具合にメチレーション反応が起こっている人もいれば、人によってはメチレーションが低下している人(=低メチレーション)や、亢進しすぎている人(=高メチレーション)がいるということです。

中でも精神疾患の治療において重要なのが、DNAのメチル化(CH3基の付加)は、神経伝達物質の輸送たんぱくを合成する遺伝子をOFFにする主な仕組みとなっているということです。

先ほど、「脳神経におけるシナプスの神経伝達物質の量はシナプスにおける輸送たんぱくと再取り込み口によって決まる」、と書きましたが、これらを作るたんぱく質の量は、その人それぞれの「メチレーション」の状態によって決まるわけです。

つまり、低メチレーションだと輸送たんぱくを合成する遺伝子がOFFになりにくいので神経伝達物質の輸送たんぱくが多くなり、結果シナプスでたくさんセロトニンが取り込まれてしまうのでセロトニンの活動が低下し、うつになりやすくなるのです。

反対に、DNAのメチル化が促進した高メチレーションの人は、神経伝達物質の輸送たんぱくを合成する遺伝子がOFFになりやすいので、輸送たんぱくの量が減って神経伝達物質の取り込み量が少なることで、ドーパミンの活動が過剰になり、不安や妄想型統合失調症を発症する傾向があります。

メチレーションは低下しすぎても亢進しすぎても、精神状態に悪影響を与えるということですね。

 

メチル基形成に影響を与える要因とは

メチレーションの状態は、ある程度遺伝で決まっているということがわかっています。また、加齢、食事内容、ビタミンミネラル不足、炎症、重金属毒性(特に銅と水銀)、腸内環境なども、メチレーション状態に大きく影響します。

さらに精神疾患系の人は、酸化ストレスが過剰になっている過剰ケースが非常に多いため、酸化ストレスを軽減することもとても大切です。

 

次回は、主要な神経伝達物質の働きについて説明していきます。