ヒートショックプロテインを増やして細胞を元気にする方法とは

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話題の「ヒートショックプロテイン」を増やして細胞を元気にする方法について解説します。

たんぱく質の構造と、ヒートショックプロテインの役割

たんぱく質は、アミノ酸が「ペプチド結合」と呼ばれる結合により鎖状に繋がってできていますが、鎖状と言っても、1本の糸のようなものではなく、複雑な立体構造をしています。

アミノ酸がペプチド結合で1本の鎖のような構造を形成しているだけものは、「一次構造」と呼ばれ、まだたんぱく質としての機能は持っていません。
次の段階として、ペプチドの鎖が、平板のシート状や二重のらせん状構造を形成したものを「二次構造」といいます。これもまだたんぱく質としての機能はありません。
そして、二次構造のものが組み合わさり、立体的な構造を形成したものは「三次構造」とといい、たんぱく質としての機能を発現するものもあります。
さらに、三次構造を形成したものがいくつか集まり、さらに大きなたんぱく質を形成したものを、「四次構造」といいます。

このように、たんぱく質は、ポリペプチドが複雑な立体構造を形成することによって作られており、その立体構造が少しでも崩れると、たんぱく質としての機能を失ってしまいます。

「ヒートショックプロテイン」は、たんぱく質分子が正しく折りたたまれるのを助ける働きをするたんぱく質で、細胞に短期的な刺激が加わることで出てくることが分かっています。
ヒートショックプロテインは立体構造の崩れた不良たんぱくを良いたんぱくに修復してくれるだけでなく、細胞の障害がひどく修復不可能な時は、細胞を死へ導いてくれる(=アポトーシスを促す)といわれています。

加温のメリット

温熱ドームに入り40分の加温(舌下温度が約2℃上昇)を行った実験によると、ヒートショックプロテインが増加するピークは加温2日後であるという結果が出ています。身体を温めることによるメリットとして挙げられるのは、以下の通りです。

細胞が元気になる
HSPが増える
免疫力が高まる
ストレス耐性が高まる
放射線障害を軽減できる
エコノミークラス症候群を防ぐ(血流が良くなり下肢血流のうっ滞を防ぐ)
疲労しにくくなる
筋疲労を軽減し、運動機能を向上させる
傷害を受けた細胞の回復を促進する
代謝が活発になり、脂肪が燃焼しやすくなる
老化を予防する

アスリートの試合前や試験前、また、手術前に加温して回復力アップを図るという方法も勧められています。(本番の2~3週間前から加温し始め、本番2~3日前にHSPが最高になるように加温して本番に備えると良い)

また、疼痛緩和にも効果があると言われています。(ガン末期、帯状疱疹、前立腺肥大などに。加温により、痛みの緩和物質であるエンドルフィンが増加する)

ヒートショックプロテインを増加させる因子

ヒートショックプロテインは、温めるだけでなくても、適度なストレス(刺激)が加わることによって増加することがわかっています。

例えば、精神的ストレスによってもヒートショックプロテインが増加します。断食をすることでもヒートショックプロテインが増えるともいわれています。

ただし、長期ストレスは逆にヒートショックプロテインを減らしてしまいます。
テスト前や試合前など、適度な緊張感を伴う精神的ストレスも、ヒートショックプロテインを増やしてくれます。ただしこの場合、その人の精神状態が非常に大切で、「がんばるゾ!」という気持ちが強ければヒートショックプロテインも増えてくれるのですが、「もうだめだ」とあきらめてしまっていると、不思議なことにヒートショックプロテインは減ってしまうのだそうです。

そして、ストレスから解放された後は、ヒートショックプロテインが一気に低下し、風邪をひいたりしやすくなると言われています。大事な仕事や試験が終わって緊張の糸が切れた後に、風邪をひいたり体調を崩したりという経験をしたことがある方もいらっしゃるのではないのでしょうか。

自分でできるHSPの増やし方

実験によると、加温によって体温を2度上げると最高にヒートショックプロテインを増加させることが出来るということが分かっています。
特殊な温熱ドームに入らなくても、週二回、高めのお風呂で(40~41℃、慣れたら42℃で10分を目標に。)温まるだけでも良いと言われています。

入浴後は水分補給を必ず行い、タオルなどを巻いて暖かくして10~15分保温するようにします。

温度や時間については個人差があるため、体調を見ながら自分にあったやり方を見つけると良いでしょう。

尚、より効果を得たい場合はお風呂のみよりも、遠赤外線加温装置(温熱ドーム)の力を借りるとさらに効果的であると言われています。

ヒートショックプロテインと温熱療法

一般的に知られているガンの「温熱療法」の目的は、熱によってがん細胞を殺すことです。がん細胞が死ぬ43度以上の温熱や、さらに高い60℃~100℃以上の熱で細胞を焼き殺したり、熱凝固を利用した方法(ラジオ波熱凝固療法)もあります。
一方、ヒートショックプロテインの原理を用いた温熱療法では、細胞を強く元気にすることが目的となります。細胞に熱ストレスを与えることでヒートショックプロテインを増加させるために加温するので、直接がん細胞を熱で殺すもとのは若干考え方が異なります。体内のヒートショックプロテインを誘導するには、41度で身体を加温すれば良いと言われており、「マイルド加温療法」とも呼ばれます。

熱によるガン細胞へのダメージについて

マイルド加温療法では直接がんを熱で殺すわけではないのですが、ガン細胞に対して選択的に熱によるダメージを与えることができるという効果も期待できると言われています。

細胞は、42℃以下では何時間加温してもほとんど死にません。ところが、43℃で加温すると、細胞はすぐに死んでしまいます。それは、43℃を境に血液が凝固する、つまり、43℃が血液が固まってしまう臨界温度なのです。

本来、血管は温めれば広がり、血流が増加します。そのため、正常細胞では、身体に温熱を与えると、その熱は速くなった血液の流れですぐに運び去られてしまいます。つまり、正常細胞を加温しても、その部分の温度はそれほど高くなることはありません。

一方、がん組織の血管は、どんどん増えるガン細胞に栄養を補給するためにどんどん新しい血管が作られるのですが、その血管は正常な神経支配を受けておらず、未熟で弱い血管です。
従って、血管に温熱を加えても、血管は広がらず、血流も速くなることができません。
そのため、ガン細胞に例えば外から周囲を44~45度で温めると、熱が逃げられずがん組織の温度が上がり、ガン組織が選択的に死滅すると言われています。
(ちなみにこの場合、正常組織では血流が7倍にもなり、熱はどんどん運び去られた結果41~42℃になります。)

そして細胞は、一度加温すると熱に対する耐性ができますので、同じように加温してもがん細胞が死ななくなるということも分かっています。このことにはヒートショックプロテインが関係しています。
例えば、細胞がほとんど死なない温度の40℃であらかじめ加温して、16時間後に細胞が必ず死ぬ45度で加温しても、ヒートショックプロテインの効果によって「温熱耐性」ができて、細胞は死なないのだそうです。ヒートショックプロテインは加温2日後をピークに、4日後まで増加することから、ガンの温熱療法は、週に1~2回のペースで行われると良いと考えられます。

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